ピアニストオーディション

先日、ピアニストのオーディションがあり11人演奏してきました。
曲目はロッシーニのLa danza
ピアニストのオーディションはちょこちょこ歌う機会がありますが、絶対にこの曲を演奏しています。多分この曲が声楽のピアニストとしての力量を見る良い曲なのだと思います。

今回は、事前の打ち合わせもなく、試験の場で軽く打ち合わせしての演奏スタイル。
僕は1番シンプルなスタイルでの演奏パターンにしました。Già のところで伸ばすやつ。あと2番も同様に。

そして敢えてテンポは指定しませんでした。
理由は2つ。
ピアニストさんが自分の思う最高のパフォーマンスを発揮しやすいように、ピアニストさんが思うベストなテンポで演奏してもらいたかったこと。

もう1つは、ピアニストさんが作るテンポで演奏した場合、音楽性がそれぞれ変わるのだけれども、その音楽感に私自身がのってみたかったこと。

ほんのすこしだけの差なのだけれども、テンポが違うだけで見えてくる世界観は随分違います。だからテンポを合わせるというよりかは色を合わせる感覚に近かったかな。

声楽だと、ピアニストやオーケストラなしには演奏ができない事がほとんど。
ピアニストと一緒に仕事することは多いですが、素晴らしいピアニストと一緒に演奏できるととても楽しい。仕事していて思う。

人は城、人は石垣、人は堀

甲陽軍鑑に記されている武田信玄の言葉だけれども、最近よく感じます。

オペラを演奏する場合、指揮者、演出家、ソリスト、合唱、そしてスタッフと僕たちはひとつのチームで取り掛かります。
しかし、チームではなく駒のひとつのように扱われる現場もあります。そういう現場だとどんなにいい演奏をしたとしてもちぐはぐ感じて達成感もないものです。
逆によいチームの現場の時は、初めましてなのに心地よかったり、なにか言葉にはできないけれどもいい演奏ができたりするものです。稽古場にいるのがとても心地いいあの感じ。

昭和音大の大学院での助演は今年度が最後です。
そんな年に1年生、2年生ともに関わることになり今年度も修了オペラまでフルで関わることに。僕が大学院生の時からお世話になっている、松本重孝先生、岩田達宗先生、そして星出豊先生の授業は本当にいい現場。こんなに素晴らしい人と同じ空気を吸える事だけでも価値がある。

大学院1年の時に、修士オペラのアンダースタディをやったのだけれど、あの時に岩田さんが熱く怒鳴り散らしながら語ったあの時に、涙が止まらなくなったことを思い出す。
2年の時の修士オペラはイル・カンピエッロだったのだけれども、あの稽古の時に重孝先生が切々と語った言葉は10年経った今も昨日の事のように覚えている。
オペラってこんなにも素晴らしいものなのか、と。

色々考えた最近でした。
いい演奏をしたいものです。

Tenore 松岡 幸汰

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